歯ぎしり・食いしばりはTCH(tooth contact habit/歯列接触癖)と呼ばれ、「上下の歯を接触させる癖」を指します。
通常、何もしていない時には上下の歯は接触していませんが、緊張・集中することが起きると、噛み締めや歯ぎしりといった状態を引き起こします。
近年、パソコンやスマートフォンなどの集中する作業が増えたことや、ストレス過多な生活からTCHを持っている方は急増しています。
TCHの状態が続くと、頬周りの筋肉が疲労し、顎関節への負担が増え、結果、顎関節症を始め、様々なお口のトラブルを発生させてしまいます。
さらに、むし歯や歯周病の歯科治療を施しても、症状を悪化させてしまう可能性もあります。
単なる癖だと思っていませんか?
歯ぎしり、くいしばりなどの癖は悪化すると口腔内だけでなく、全身の様々な場所に繋がる可能性があります。
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- 歯
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歯のヒビ、破折、咬合通など
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- 歯周組織
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歯肉炎、歯周病、歯肉の減退など
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- 顎関節
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顎関節痛、開口障害など
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- 全身
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顔面痛、頭痛、肩こり、腰痛など
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- その他
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舌痛症、むちうち症状、倦怠感など
現代に増えているTCH(歯列接触癖)
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歯のヒビ割れ・破折
継続的に歯に強い力がかかることで、歯が割れる、折れることがあります。
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骨隆起
継続的に顎の骨が強い力で刺激されることで、本来平らな上顎、下顎の骨が盛り上がってしまう症状です。
身体に害はありませんが、喋りにくい、入れ歯を作る際に邪魔になるといった支障が出ます。
上顎の中央部分や、下顎にボコボコとした膨らみがある場合は、骨隆起であることが考えられます。 -
歯肉の減退
継続的に歯ぐきや顎の骨などの歯周組織に強い力がかかることで、骨が減り、歯ぐきが下がることがあります。
歯ぐきが下がると、歯の根があらわになることで「根面カリエス」のリスクが高まります。
歯の根は上部と違って弱い歯質のため、病気にかかると進行が速く、大変危険です。 -
舌圧痕(舌の変形)
舌や頬粘膜の圧迫により、歯列に舌が押し当てられることによって生じます。
身体に害はありませんが、悪化すると舌疾患などの症状を引き起こす可能性があります。
症状の原因は歯ぎしり・食いしばり以外にも、内分泌疾患や消化器機能の疾患の場合もありますので、原因を明らかにすることをおすすめします。 -
頬粘膜圧痕(頬の筋)
歯ぎしり・食いしばりで強くかみ合わせる強い力の影響で、頬につく噛み合わせの跡です。
身体に害のはありませんが、悪化すると外傷を作るといった症状を引き起こす可能性があります。
TCHのセルフチェック
- 舌の周りがボコボコと波打っている
- 上顎、下顎にボコボコとしたできものがある
- 歯のヒビわれがある
- 歯の欠けがある
- 歯周病ではないのに歯ぐきが下がった
- 頬の内側に白い筋がある
- 顎がだるい
これらの症状がある場合は、TCHである可能性が高いです。
顎関節症のセルフチェック
- 顎の筋肉が痛い、重い、だるい
- 口が開けにくい
- 口を開けるとジャリジャリ、ポキポキなどの音が鳴る
- 頭、顔、首、肩などに原因不明の痛みが続く
- むし歯でないのに歯が痛む など
これらの症状がある場合は、顎関節症である可能性が高いです。
1.行動認知療法
仕事や家事などの日常生活の中で、無意識かみ締める、頬杖をつく、肩と頬で電話の受話器を挟むなど、顎に負担をかけるきっかけは多くあります。
そのため、癖を意識して、気が付いたときに肩の力、頬の力を緩めて、歯をかみ合わせないようにしましょう。
また、無意識で行っているため、定期的にチェックできる環境を作ることが大切です。デスクや自宅の目立つところにメモで「口の確認」などと表記すると効果的です。
2.マウスピースによる治療
マウスピースを口に入れ、顎の関節にかかる過度な負担を軽減します。
症状により使用する材料や、装着時間は異なります。
多くの方はナイトガードといって、就寝時に装着するマウスピースで症状の緩和を目指します。
マウスピース作製後は、初めは1~2週間後を目安にマウスピースと顎の状態を確認し、その後は数ヶ月単位で間隔を空けて経過観察を行います。
3.歯ぐきの移植手術
歯ぐきが下がってしまった場合は、移植手術が可能です。
根面カリエス(歯の根っこのむし歯)の防止、歯ぐきの見た目を美しく回復することができます。